過去の発生状況

金蛍発生予測                            


●初めに
 金蛍の発生予測をするようになったきっかけは、金蛍の撮影をするようになって暫くしたころから、今年の発生はいつ頃になりそうかという問い合わせが来るようになり、その頃は感覚的にお答えていましたが、もっと正確な情報は取れないものかと考え、いろいろ調べているうちに発育限界温度(発育ゼロ点)と有効積算温度が昆虫の発育に大きく作用していることが分かりました。
 昆虫にとって、受精から死までの一生は季節の進行にともない、卵から幼虫にそして蛹から羽化して成虫にと変化(生活環という)していきますが、生活環には気温の変化が大きく作用していることは知られています。
 昆虫のような変温動物の場合は、生息環境の外気温の変化が体内で起きる反応に大きく作用することから、体内で起きる変化は、気温が高ければ早く低ければ遅くなることが考えられます。
 そこで、現地の気温を調査しようと考えましたが、通年記録を取るわけにも行かないので、気象条件が近いと思われる気象庁のアメダスからのデータを参考に独自に調査研究をすることとなりました。

●発育限界温度(発育ゼロ点)
 そこで問題となるのが昆虫の種類によって違うとされる発育限界温度です。

 一般的に10度前後の昆虫が多いことから、気温データに任意の温度を当てはめ試行錯誤を繰り返した末に、過去の発生記録に照らして最良と考えた9.3度(この数字が正しいかどうかは分かりませんが)を導きだし採用することとしました

●有効積算温度
有効積算温量(日度)を使うことの方が多いようですが、私の場合は有効積算温度を採用し、平均気温が発育限界温度(9.3度)を超えた日の気温のみを積算した数値としました。

●発生予測日
 以上のことから、初見日は有効積算温度が1,250度に達した頃ではないかと考え、発生する頃の1日の平均気温が20度以上で有ることから、1,230度から1,270度の範囲で発生すると考えられ、ここでの40度の差は前後1日程度で有ることから容認される誤差の範囲で有ろうと考えられます。
 過去のデータに照らしてみると、概ね75%の確率で的中していますが、残りについては発育限界温度に達する時期が大きく違ったことや発生時期の直前の気温が低かったこと等が考えられます。
 また、地表で生活していた幼虫が蛹になるために、羽化の約1ヶ月半程度前に地中に潜ることから、5月中旬までの気象条件が発生時期に大きく影響しているのではないかと考えられます。
 以上のような条件を加味して考えると、5月中の有効積算温度の推移を注視していくと概ね発生時期(初見日)の特定が可能だと考えられます。(現地の詳細な気温データが有るともっと正確に特定できるかも知れません。)

●まとめ
 過去の記録から、初見日には数匹程度の飛翔の確認ができるのみで、見頃を迎えるのはそれからさらに4・5日後になることや、生き物である以上個体差があることも考慮すると、更に100度程度を加算した1,350度に達する頃から1,500度程度になる頃ではないかと考えられます。